駒鳥です。
IT業界に身を置いていると、日々多くの専門用語を耳にします。
プログラミングにおいてはまあ当たり前のようにありますが、ビジネス用語としても、多くの専門用語が存在しています。
中には、普段の会話で聞きなれないカタカナ語・横文字のビジネス用語も。
こうしたカタカナ語については、定期的に非難や嘲笑の的になったりします。
ルー大柴さんになぞって「ルー語」と呼んだりもするようです。
以下のようなまとめも最近また登場していたりするほど。
「マウント取ってるだけじゃん。わかりづらいから日本語で言えよ(笑)」
という意見もまあ、理解できますが、IT業界に身を置いている立場としては、その主張に対して違和感を感じる部分もあったりするのです。
そんなにバカにするようなことなのか?と思うのです。
そこで、あえてこの記事では、なぜIT業界ではこうしたカタカタ語、横文字のビジネス用語を好んで使うのかを考えてみたいと思います。
IT業界で使われるカタカナ語と、それに対する評価
IT業界で使われ、分かりにくいと言われるビジネス用語にはどんなものがあるのか、まずはその一例を挙げてみたいと思います。
- アジェンダ
- コミット
- フィックス
- ナレッジ
- ペンディング
挙げ始めたら結構キリがないですね。
この辺りの言葉は、実際僕も仕事では会話の中で使いますし、周りの人も多用しています。
ですが、冒頭のまとめでも言われているように、聞きなれていない人には分かりづらいものだと思います。
僕自身、たまに、「あれ、それどういう意味なんだっけ」とGoogle検索で調べることはあります。
こうした言葉を使うことで「賢くなった気になれる」みたいな記事もあるようです。
また、これらの言葉を多用することでマウントを取っているんではないか、とか、意識高い系(笑)が使う言葉だ、という意見も少なくありません。
グローバル化だのなんだので無駄にカタカナ英語混ぜ込む意識高い系はほんと勘弁してほしいと思う(しろめ RT @sen82599650 ムカつくカタカナ語への思いを綴りました。今後も新しいカタカナを聞き次第更新していこうと思います。 pic.twitter.com/sGDIdA5tBR
— タマキ・ザ・タオルケット@憂以 了(ういりょう) (@0141Uiryou) August 7, 2020
なぜカタカナ語、横文字のビジネス用語を使うのか
では、なぜIT業界ではカタカナ語や横文字の、パッと意味がわからないこともあるビジネス用語を多用しているんでしょうか。
その理由は、大きく2つあると考えます。
みんなが使っているから
まず1つ目はとてもシンプルで、みんなが使っている言葉だから自分も使う、という理由です。
上述した通り、実際の現場において、いくつかの言葉はかなり日常的に使われています。
みんなが日常的に使っている共通言語であれば、当然その言葉の意味はおおよその人が把握しているのであって、無理に日本語に直す必要がありません。
もしわからない単語に遭遇しても、聞けばいいし、Google検索でもすればそれで十分です。
日本語に直そう、この単語はこう言うようにしよう、というのを決めて現場に浸透させようとすること自体、時間の無駄だと感じます。
ニュアンス、用例自体が輸入されたものであるから
もう1つ、こちらがおそらく本質的な回答となりますが、多くの単語が、そのニュアンスや用例・使い方ごと、海外から輸入されていると考えられます。
カタカナ語・横文字表記のビジネス用語の多くはその実態が英語です。
これら英語のビジネス用語をよく利用するのはITやコンサルなどなんです。
これらの業界の知識や手法は、海外の方が先進的で、海外から日本に輸入されるケースは少なくありません。
プログラミング言語は当然ながら、gitをはじめとした開発のためのツールや環境も、海外初のものが日本の現場でも取り入れられることが非常に多いのです。
たとえばビジネスの現場においても、Salesforceをはじめとした、海外のSaaSは日本の企業に多く取り入れらています。
そうなると、Salesforceを利用している日本の企業も、Salesforceの文脈でカタカナ用語や横文字を使うことになったりします。
冒頭で例に挙げた中に「ナレッジ」というのがありますが、これもおそらく同様に、輸入された概念でしょう。
ナレッジ = knowledge は、「知識」「知っていること」というのが直訳です。
しかし実際のIT現場においては、そのままのニュアンスではこと単語を使わず、「会社や組織に蓄積された知識・知見」というニュアンスを指す場合に利用します。
これは、knowledge baseという考え方がベースにあると考えられます。
こうした、ニュアンス、用例、あるいは概念ごと日本に輸入されている場合に、英語のまま現場で使う、というのが実態であるケースは多いと思います。
カタカナ語や横文字ではなく日本語で表現するべきか
カタカナ語、横文字のビジネス用語に対しては、冒頭で紹介したように、日本語で表現した方がわかりやすいから、そうすべきだ、という意見が一定数見受けられます。
この主張が正しいのかについても、少し考えてみたいと思います。
・・・ところで8月になってすっかり暑くなりましたねえ。
この時期は汗をかいてしまうので、スタバとかでコーヒーを飲むときも、ちょっと大きめのグランデサイズを選んだりするんですよ。
ああ、すみません。カタカナ語や横文字の単語を日本語で表現した方がいいのか、という話でしたね。
結論、横文字やカタカナのビジネス用語を日本語に直すべきだ、という主張は的外れだとおもいます。
なぜなら、これらの用語は単に英語か日本語か、という話ではなく、現場でのニュアンスを含んだ単語であるからです。
無理に日本語に訳してしまうことで、それらのニュアンスが失われて、返って意思疎通に失敗する危険があります。
というかそもそも、これらのカタカナ語・横文字のビジネス用語たちは、日本語から英語に訳したものでないものが大半です。
最初から英語として輸入され、それが使われているものなので、日本語に直す、と言われてもどう直すのが正解なのかがわかりません。
スタバでグランデサイズとかトールサイズとか言わずに、特大、大、中、小と言った方がわかりやすい、くらいの違和感です。
そりゃ訳したらそういう意味なんだけど、最初からトールとかグランデなんだから、無理に訳す意味はないんじゃないか?と思うのです。
カタカナ語を使う人は何を考えて使っているのか
最後に、実際にIT業界でエンジニアとして働いていて、普段からカタカナ語や横文字のビジネス用語を使っている立場から、何を考えてカタカナ語を使っているのかを記しておきたいと思います。
何を考えて使っているかというと、別に何も考えていません。
よく取りざたされているような、使えば賢く感じるとか、マウントを取っているとか、そんなこと考えていません。
もはや業務の中で当たり前のように使う共通言語なので、自分も使っているだけで、それ以上でも以下でもありません。
もしかしたら、中には賢く感じるから、という理由で使う人もいるかもしれません。
ですがそれは、その人のコミュニケーション力がちょっと低いだけかとおもいます。相手の受け取り方を考えられていないだけですよね。
なので、こういうカタカナ語自体を意識高い(笑)、マウント取ってると言われるのを見ると、そうかなあ?と思うのです。
むしろそういう批判、嘲笑こそがマウントなのでは?と思うことも正直あります。
僕も自分が属していない業界の文化に対しては、無条件に批判するのではなく、どういう背景があるのかを考える、という視点は持っておきたいものです。
それでは。